「張合! 趙厳と牽招の軍、補佐に郭嘉をつける。攻めては退き、退いては攻める舵取りが難しい軍運用、しかも渤海太守による目に見えない妨害が飛んでくる可能性すら含んでいる状況、これを完遂出来るか」
「出来なければこの首を差し出しましょう!」
張合だけでなく、趙厳と牽招も揃ってその場でやると意志を示す。若さが溢れるな、これを失うつもりはこれっぽっちもないぞ!
「郭嘉、微細な戦況予測に無色透明な阻害、what is a bear market 求められる内容は膨大だ、さばき切れるか」
「そのくらい出来ずに主を支えるなど口に出来るでしょうか。どうぞやれとご命令下さい」
「よし、主将張合に兵一万五千、趙厳、牽招を預ける。郭嘉の助言で判断し見事公孫賛軍の渤海攻撃を引き出せ」
これで公孫賛はどこかで一度、不安定でも攻勢に出なければならない瞬間がやって来る。俺はその時、必ず戦いに勝利すべき義務がある。やってやるさ、いくらでもな。あとは弩兵五千に歩兵か。どこかで動員兵を一時的に利用することになるが、うっかり城を失陥というのは絶対に避けるべきだな。
「残るは兵二万五千と弩兵五千でありますが、清河国は東武城県と鋸鹿郡の南蛮県、この二カ所が重要かと存じます」
東武城は周辺十県の中心で交通の要衝。そして南蛮県は高邑、信都、邯鄲、そして清河の郡都甘陵を窺う中間地点か。後者の聞こえはあまりに俺にしっくりと来る場所だな。
「沮授殿、審配、審栄を配し、兵一万と弩兵三千を預ける。東武城に入り周辺県の維持と、万が一の際には張合の援助を頼みたい」
「それでは本営の戦力が低くなりすぎて、島将軍が窮するのではありませぬか?」
兵一万五千弩二千で公孫賛と正面でぶつかりつつ、もしもの際には魏国の方面にも増援を送る必要があるからな。このもしも、山賊だけではなく袁紹の事も含んでいるぞ。
「なに、その位俺の度量でどうとでもする。袁紹への工作はそちらに任せるがいいな」
「その位せねば某の在る意味がありませんな。どうぞご懸念なく」
「よし決まりだ。では荀攸殿、俺達は南蛮に入るぞ。程喚にも報せておくんだ」
地域の城を護るだけならば充分なやつらは幾らでもいるらしいからな、あとはそれを利用して戦域全体をまとめる頭があれば充分戦える。これが出来ないようでは将軍を名乗っているのが恥ずかしいぞ。こう見てみると、やはり文聘達は有能だったんだなって再確認出来るよ。 そこから十日とせずに俺は南蛮県に入城した。だだっ広い平地の真ん中にある平城で、まともな道も南北と南東方面に一本ずつしか伸びていない、守るには苦労しそうな土地だった。
「ふむ、荀攸殿、こいつはいちはやく南宮を奪った方がやりやすそうだな」
「確かにこれを運用すべく苦労をするよりは、居場所を変えた方が良さそうな気はします。来てみねばわからぬものではありますが、さすがにこれは厳しいかと」
図上ではここが便利そうだったが、こいつは酷い。農村として見れば最高なんだが、軍事拠点としての適正地かというと疑問しかない。まあ知ることが出来たのをプラスだと考えようか。
「南宮への偵察を出しておくんだ。それと城外に簡易砦を設置させるとしよう、木柵や空堀で縄張りをつくる程度の奴をな。それだけでもかなり違ってくるはずだ」
人は敵との物理的な隔たりがあるだけでも落ち着くものなんだよ。どこまで物理防御力があるかは問わん、布を垂らしてあるだけでも精神的に違うのは体感してのことだからな。