にぶつけ

にぶつけ、乗っ取りをかけて奪おうとした作戦で・・・」

「へー。かような派手な作戦。指揮は、土方さんだろう?好きそうだ」

「原田先生、当たらずとも遠からずです。実際は、検分役ですが・・・。兎に角、利三郎らが乗り込みますが、そうそうに戦況が不利になり、撤退することになります。その際、かれら数名が戻ることができず、取り残されてそこで・・・。戦死し、遺体は水葬されたと」

 

 沈黙。みな、なにを考えているのだろう。

 

 そして、くぐもった笑い声。同步放化療 組長たちは、声を殺して笑っている。

 

「なぁ、それもまた胡散臭いじゃないか。あの利三郎が、勇敢にも敵のに乗り込み、そこで戦死?」

「左之の申すとおり。土方さんのとおなじくらい、馬鹿げている」

「新八さんに同意だ。利三郎がというところで、すでに誤って伝えられてるとしか考えようもない。主計。おぬし、利三郎とつきあっていて、あいつがおぬしのしっているとおりの死に方をすると思うか?」

 

 斎藤はそういってから、くくくっと笑う。

 

 たしかに・・・。

 

 後世「宮古湾海戦」と呼ばれるようになる戦いである。

 

 新政府軍が買い取った、甲鉄艦。それを、榎本ひきいる箱舘政権が奪おうとしたのである。

 

 こうして野村とすごしていると、かれが自分から志願して乗り込むなんてことは、絶対にない。

 

 命じられても、腹が痛いだの頭が痛いだの悪いだのと、いいわけしたりごまかしまくり、回避するにきまっている。 それには、おれも添役としていっている。おれは、甲鉄に乗り込まない。

 

 史実では、この世界史でも稀有な移乗攻撃は、回天というで攻撃をしかける。じつは、この作戦に参加したのは回天一隻ではない。蟠竜と高雄というとでおこなうはずであった。が、不運である。嵐や故障、連携がとれなかったりで、結局、回天一隻で甲鉄にぶつかるのである。

 

 そのとき、おれは抜刀隊には選抜されておらず、回天に残る。

 

 なにか、それまで嘘っぽい。もとい、誤って伝えられているという気になってくる。

 

「ゆえに、利三郎のことも気にする必要はないってこった」

 

 永倉の断定に、原田も斎藤もおおきくうなずく。

 

 たしかに。野村も戦死し、水葬されたとは確実にいいきれない。すくなくとも、それを見届けた味方はいないのだから。

 もしかすると、史実には残っていなくても、命乞いして助かったのかもしれない。それは、野村が自分のが惜しいからではない。かれなら、その場をなんとかしのいで捕虜になったとしても、うまく逃げだして一矢報いる算段をするはず。

 

 野村とは、そういうしたたかさがある。が惜しいからではない。かれなら、その場をなんとかしのいで捕虜になったとしても、うまく逃げだして一矢報いる算段をするはず。

 

 野村とは、そういうしたたかさがある。の内輪もめ程度の価値しかありません。いくら御陵衛士の人たちが騒ごうと、鵜呑みにするとは思えません。あくまでも、こじつけて責任をとらせたいだけか、と」

「なら、斎藤やおれは、責をとらされなかった、と?」

「永倉先生は、松前藩に帰藩されます。さしてなんの咎もなく、さる藩医の婿養子になって蝦夷にゆきます。さして咎がなかったのは、松前藩が敵に恭順していたからかもしれません。そして、婿養子が隠れ蓑になったからかも」

「新八、おまえもこすいよな」

「な、なんだと、左之?正直、おれにそこまでして生き延びたり責を免れたりって気はない」

 

 憤慨する永倉。 たしかに・・・。かれは、どちらかといえば、最後まで戦い、死にそうである。帰藩した後、松前藩家老の何某のとりなしで、藩医の婿養子になっている。無理矢理といっては語弊があるかもしれないが、説得されたのかもしれない。藩も、新撰組の幹部を帰藩させたとはいいにくいであろう。

 

「まぁ、松前藩にもいろいろ大人な事情があるんでしょう。それは兎も角、斎藤先生は、会津で副長と別れたのち、会津藩士たちと行動をともにします。戦ののち、会津藩士たちとともに謹慎し、そのあとは警察官になります。おれの昔の仕事とおんなじです」

「魁は?魁も島流しに?」